100号(2023年1月発行)

Close Up あこがれの大人になるために。
目標はテニスで全国制覇!
自分を成長させてもっと強い選手になりたい

2023年1月号 100号

三木 煌士 さん

血友病Aの重症型である三木煌士さんは現在中学2年生。小学1年生から始めたソフトテニスは、何度も全国大会に出場するほどの腕前です。週3、4回の定期補充療法を行いながら、学校の部活動とクラブチームに所属し、より高い順位を目指している三木さんに、学校生活やソフトテニスのこと、将来の目標などについて伺いました。

何でもまず挑戦、ごく普通の学校生活を

生後7カ月頃、歩行器が接触するお腹の辺りにあざができ、さまざまな医療機関を受診しましたが、原因はわからず虐待を疑われるようなこともあったそうです。その後、乳児健診の採血時に血が止まりにくかったことから血液検査を勧められ、血友病と診断されたと聞いています。動きが活発になった2、3歳頃、注射のたびに病院に連れて行くことが大変になり、主治医の勧めで家庭療法を始めたそうです。その頃は、暴れる僕を父がバスタオルにくるんで押さえ、母が注射するという状態で、両親も大変だったと思います。

 

学校行事で宿泊を伴うキャンプがあったことから、小学4年生のときに自己注射の練習を始めました。いざキャンプ場で注射をしようとしたら、山の中で気温が低く、血管が浮き上がらず失敗してしまいましたが、学校側の配慮で看護師さんが同行してくれていたのでサポートしてもらうことができました。主治医に必要な投与量などを文書にしてもらい、事前に学校に提出していたこともよかったのだと思います。

 

両親が、まずは何でも挑戦してみて、難しかったら対処法や違う選択肢を考えるという姿勢なので、学校の授業や学校行事はすべて参加してきました。ただし、サッカーをしたときに足首から出血してしまったことがあり、体にボールが直接当たる競技は少し難しいと母は感じたようです。保健室に製剤を1本置かせてもらっているので、必要なときは保健室に行って注射をしています。

両親の影響でソフトテニスを始め、内面も成長

ソフトテニスは、指導者をしている両親の影響で始めました。野球もやりたかったので迷いましたが、主治医に相談したところ、「長く続けていく場合、野球はスライディングなどのプレーに影響が出るかもしれない。テニスやバドミントンのようなラケット競技がよいのでは。」とアドバイスされ、両親のクラブチームに入ることを決意しました。

 

ソフトテニスは、とくにダブルスが好きで、短い試合時間の中でどう攻守するかをペアと考え、コミュニケーションを取りながら協力して戦うところに魅力を感じています。

 

以前は感情の起伏が激しく、自分のミスなど些細なことにすぐ怒る性格だったので、高学年になった頃、ずっと組んできたペアから「もうペアを組みたくない」と言われたことがありました。それをきっかけに自分を変えなければならないと思い、感情のコントロールや、モチベーションが上がるような声かけを意識し、相手を思いやって行動できるようになりました。練習を通じてマナーや礼儀を身につけられたことも、自分の成長につながったと思います。

訪れたピンチも自分たちの力で乗り越える

印象に残っているのは、小学6年生のときの全国大会でベスト16を決める試合です。ミスを重ねて3ゲーム続けて取られてしまい、あと1ゲーム取られれば負けるという後がない状態になりました。そこでペアと話し合い、基本に立ち返って自分たちのプレーをしようと気持ちを切り替えたことで、試合の流れを変えて勝利を収めることができました。とても貴重な経験だったと思います。

 

中学校入学後は、週5日は部活動で練習をして、部活動がない日はクラブチームで練習しています。大会前はつい無理をしてしまうので、両親のアドバイスをもとに練習が長時間にならないようにしています。自分一人では練習し続けてしまうので、長く選手生活を続けるために両親がブレーキをかけてくれるのはありがたいと思っています。

 

血友病であることは、競技には全く影響していません。痛みや出血があったら適切な対処をすればいいだけです。一度、大会中に筋肉を痛め、会場で注射をしたことがあります。テニス仲間の前で打つことになったため、「今から注射します」と宣言し、一つ一つの手順を実況しながら注射しました。血友病であることは恥ずかしいことではないので、注射する理由を尋ねられたら、「血が止まりにくい病気だから」と事実を伝えています。

将来は医療に関わる職業に就いて治療への貢献を

今年は、県大会で優勝し、関東大会を経て全国大会に出場することができました。今の目標は全国大会で優勝することです。今後はソフトテニスの強豪校への進学や、家を出て寮に入ることも考えています。高い目標を持って仲間と切磋琢磨することも寮生活も楽しみです。それを実現するために、もう少し自己管理ができるようになりたいと思っています。そして将来は医療に関わる職業に就きたいです。血友病でも注射が要らなくなるよう、医薬品開発に関わりたいと思っています。

 

今は、注射をすればほかの人と同じ生活やテニスもできるので、「注射することでもっと楽しく過ごせる」ということが治療へのモチベーションとなっています。血友病であることは、ハンデみたいなものだと思っているので、それに打ち勝つよう頑張れば、楽しく毎日が送れると信じています。

■ お母さまの声:積極的な挑戦を前向きな姿勢で見守りたい

小学校入学後は進級のたびに担任の先生と面談をして、病気について説明し、対応していただきたいことをお願いしていました。低学年の頃は頻繁に先生から電話がありましたが、学年が上がるとともに先生同士で情報を引き継いでくださり、注射が必要か的確に判断していただけるようになりました。そして何より息子本人が注射の要否を判断できるようになったことも、適切な対処につながっていると感じます。中学生になってから部活動が始まりましたが、顧問の先生にも、どのようなときに注射が必要となるかしっかりお話ししていますので、不安はありません。
血友病だからといって制限をかけるのではなく、本人がやりたいことは積極的に挑戦するよう促しています。そのためか、学校の先生には「病気のことがあって慎重かと思いきや、行動的ですね」と言われます。同じ血友病のお子さんをお持ちの方には、保護者が前向きな考え方でいるほうが、楽しく子育てができるということをお伝えしたいですね。

  • 最適な治療法や製剤輸注量・輸注回数は、患者さんごとに異なります。ご自身の治療については、主治医と十分にご相談ください。