Q&A
- 監修: 医療法人財団 荻窪病院 血液凝固科 部長 鈴木 隆史 先生 臨床心理士 小島 賢一 先生
Q1
学校内で気をつけなければならないことはありますか?
特にありません。血友病の子どもに限ったことではありませんが、頭部打撲による頭蓋内出血には一番の注意が必要です。頭を打った後に頭痛や吐き気を訴えたり、ボーっとしたりしている場合は、すぐに保護者や主治医に相談し、救急車を呼んでください。
Q2
図工や家庭科の授業などで、ハサミ、カッターナイフ、包丁などを使用させてもいいですか?
問題ありません。うっかり切ってしまった場合には、圧迫、冷却して止血してください(参考:R・I・C・Eと出血部位ごとの対応)。傷が深いときには追加で凝固因子製剤の注射が必要になることがあります。念のため、事前に子どもと保護者に自己注射ができるかを確認し、学校に凝固因子製剤を保管していただけると安心です。
Q3
体育の授業を見学する際の注意はありますか?
見学する理由によります。出血や体調不良の場合は安静が必要なため、軽い運動も禁止して、関節に負担のない楽な姿勢で見学させてください。衝突や激しい運動を回避する目的の見学の場合、審判や計測係など、できるだけ授業に参加できる工夫を考えてあげてください。もちろん柔道なら受け身、剣道なら素振りなど問題がない活動もありますので、全てが駄目というわけではありません。出血がなければ、見学時に負荷の少ないストレッチ体操や筋力トレーニングを行うことはかまいません。
Q4
歯科検診を受けていいですか?
歯科検診や歯磨き指導なども全く問題ありません。よく見るケガと応急処置のポイントでも紹介しましたが、歯ぐきからの出血のほとんどは治療しなくても止まりますし、出血が続く場合でも、冷たい水で口をゆすいだり、トラネキサム酸(止血剤)を内服したりするだけで止血することも少なくありません。
注意したいのは、抜歯する場合で、その時には凝固因子製剤の注射が必要です。歯周病や虫歯になると治療は大変です。日頃からきちんと歯磨きをして、検診を受け、予防することが大切です。
Q5
クラブ活動はどのようなものを勧めたらいいですか?
文科系クラブだからといって、出血の心配がないとも限りません。例えば、音楽部で打楽器担当になり、肘や手首を激しく動かせば出血のリスクは高まります。
近年では治療法が進歩し、出血症状も少なくなっているため、体育系のクラブに参加する子が増えています。スポーツにより筋力をつけることは関節内出血の予防にもつながります。しかしスポーツを強制してもいけません。クラブ活動を決める上で最も大切なのは、本人の希望といえるでしょう。本人が楽しみながら続けられることが重要です。また、クラブの雰囲気も重要です。出血時に休む可能性があることなども考え、さまざまな状況の子どもを理解し、支援する雰囲気があるかどうかも重要になってきます。
Q6
留学(海外赴任)はできますか?
多くの方が行っています。1〜3ヵ月程度の短期間はもちろん、海外の学校に在籍することもできます。しかし留学(赴任)先の血友病の医療事情は事前に調べておいてください。専門医のいる施設、製剤が納入されている病院はどこか、現在使用中の製剤はそこで認可されているのか等々。その上で主治医と相談して、持参する量を決め、証明書などの準備をしてもらいます。
Q7
凝固因子製剤による感染症の心配は本当にないのでしょうか?
30年前はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症やC型肝炎が問題になっていましたが、現在の凝固因子製剤では感染症の心配はありません。
1985年からウイルスを不活性化するための加熱処理が導入され、1990年代前半からヒトの血液を原料としない遺伝子組換え技術による凝固因子製剤も多く登場しています。ただし、健康管理的な観点から、血友病に関係なく他人の血液に直接触れないようにする衛生指導は必要ですね。
Q8
血友病の子どもに対して、使用上、注意しなくてはいけない薬はありますか?
血友病の子どもが風邪をひいたり、発熱したりしたとき、イブプロフェンやアスピリン、インドメタシンを含む薬の使用は控えてください。これらの薬は血小板の働きを阻害し、出血しやすくなることが考えられるためです。なお、アセトアミノフェンを含む薬は使用できます。子によってアレルギーなどに注意しなくてはならないのは同じですから、できれば事前に保護者や医師と相談し、使用できる薬を確認しておくか、学校で保管しておくといいでしょう。