福祉サービス・介護保険

  • 監修: 産業医科大学 名誉教授 白幡 聡 先生
    産業医科大学病院 ソーシャルワーカー 野田 雅美 先生
    産業医科大学病院血友病センター ナースコーディネーター 柏原 やすみ 先生

手帳によって利用できる福祉サービス

身体障害者手帳によって色々な福祉サービスを受けることができますが、サービスの内容は障害部位や等級により様々です。また、自治体によってサービスの範囲が異なることもあります。手帳の交付時に福祉サービスのガイドブックを配布したり、ウェブサイトで情報提供している自治体もありますので窓口身体障害者手帳 表 参照で、おたずね下さい。
主なサービスは以下の通りです。

①自立支援医療(更生医療)

身体障害を軽くしたり、重くなるのを防ぐための医療費の負担が少なくなります。

  • 対象者 身体障害者手帳の交付を受けており、一定の条件を満たす18歳以上。
  • 窓口 市(区)の人は市(区)福祉事務所、町村の人は町村役場福祉担当課。
  • その他 病院は国や県が指定した医療機関に限ります。角膜手術、心臓手術、血液透析、関節形成手術などが対象となりますが、治療前に手続きが必要です。自己負担額は原則1割です。所得によって月額負担上限額が決まります(一定所得以上の人は対象外となります)。

②重度障害者医療

重度の障害がある人の医療費を助成します。

  • 対象者 身体障害者手帳「1、2級」の人と療育手帳「A」の人。
  • 窓口 市(区)の人は市(区)福祉事務所、町村の人は町村役場福祉担当課。
  • その他 医療機関で診療を受けた場合に保険診療による自己負担分が助成されるので、無料になります。ただし、入院中の食事代や保険外負担分は助成対象外です。また、所得制限があります。この制度は、自治体によって制度の名称も対象者の範囲も違います(上記の名称、対象者は北九州市のものです)。

③駐車禁止除外指定車標章の交付

障害者の車が駐車禁止区域内でも駐車できます。

  • 対象者 身体障害者手帳の交付を受けている歩行困難な人。または介添えを必要とする身体・知的障害者を乗車させる同居の配偶者・家族。
  • 窓口 住所地を管轄する警察署。
  • その他 交付にあたっては、障害の状況等に一定の基準があります。詳細は警察署におたずね下さい。

④補装具の交付・修理

障害を補うための用具を交付(または修理)します。

  • 対象者 身体障害者手帳を持っている人。
  • 窓口 市(区)の人は市(区)福祉事務所、町村の人は町村役場福祉担当課。
  • その他 補装具の交付・修理には事前に申請が必要です。費用の利用者負担は原則1割となります。ただし、所得に応じた一定の負担上限があります。補装具の種類はの通りです。なお、一部の種類では介護保険制度が優先的に適用されます。65歳以上の人と40歳以上の介護保険で指定されている16疾患(血友病は含まれません)の患者さんは、身体障害者手帳を所持していても介護保険が優先されます。

表 補装具の種類

障害別種 類
視覚障害盲人安全つえ、義眼、眼鏡
聴覚障害補聴器
肢体不自由義肢(義手、義足)、装具、歩行補助つえ、座位保持装置、歩行器車いす電動車いす
18歳未満の人のみ→座位保持いす、起立保持具、排便補助具、頭部保持具
重複障害重度障害者用意思伝達装置

下線が介護保険優先の用具です。

⑤日常生活用具の給付・貸与

日常生活の便宜をはかるための用具が給付(または貸与)されます。
  • 対象者 身体障害者手帳を持ち、在宅で生活している人。
  • 窓口 市(区)の人は市(区)福祉事務所、町村の人は町村役場福祉担当課。
  • その他 日常生活用具の給付・貸与には事前に申請が必要です。費用の利用者負担は原則1割となります。ただし、所得に応じた一定の負担上限があります。各障害の程度によって利用できる用具が決まります。また、一部の用具では介護保険が優先されます。詳しくは窓口におたずね下さい。

⑥介護給付

居宅介護や同行援護などのサービスがあります。

介護給付には、居宅介護や同行援護、行動援護などの障害福祉サービスが用意されています。この介護給付を受けるには、新たに申請をして、市町村にサービスの必要度(障害支援区分)を認定してもらう必要があります。ここでは、介護給付の訪問系サービスである居宅介護についてご紹介します。

  • 居宅介護: 自宅で入浴や排泄、食事などの介護、調理や洗濯といった家事、生活に関する相談など生活全般の援助を行います。
  • 対象者 障害支援区分1以上の人。←障害支援区分とは、身体障害者手帳の等級とは異なる基準です。
  • 窓口 市(区)の人は市(区)福祉事務所、町村の人は町村役場福祉担当課。
  • その他 利用者が申請後、本人への聴き取り調査をもとにした一次判定、一次判定の結果や主治医の意見書をもとにした二次判定で障害支援区分が認定されます。その後市区町村にサービス等利用計画案を提出し、支給が決定されます。相談支援事業所に申請の代行を依頼することもできます。

〈手帳を受け取る際に福祉サービスの確認を〉

本ページの①~⑥以外にも身体障害者手帳には、職業能力開発校や身体障害者施設の利用、JRやバス、国内線航空料金などの交通運賃の割引、税金の障害者控除が受けられるなど色々なサービスがあります。身体障害者手帳を受け取る際には、福祉サービスのガイドブックのことや自分の等級で利用できるサービスを窓口で確認して下さい。

〈18 歳未満の人を対象とした自立支援医療の“育成医療”〉

①自立支援医療(更生医療)のいわば「子ども」版です。現在身体に一定の障害がある、または身体に疾患があり治療をせずに放置した場合、将来一定の障害を残すと認められる18 歳未満の人を対象とした、医療費の負担を少なくするサービスです。この育成医療には身体障害者手帳の交付は不要です。
この育成医療も指定医療機関での治療が対象となり、治療前に手続きが必要です。保護者の所得状況に応じて自己負担があります。詳しくはお住まいの市区町村の窓口におたずねください。