血友病と遺伝
広島大学病院輸血部 部⾧ 藤井輝久 先生
奈良県立医科大学附属病院小児科 教授 野上恵嗣 先生
血友病は、X染色体にある凝固因子の遺伝子の異常によって起こります
遺伝情報を伝える「染色体」
私たちのからだを構成する細胞には、父親と母親の遺伝情報を受け継いだ23対46本の染色体が納まっています。このうち23番目の対は性染色体と呼ばれ、性別を決める役割があります。両親から1本ずつX染色体を受け継ぎ「XX」の組み合わせになったら女の子、父親のY染色体と母親のX染色体とを受け継ぎ「XY」となったら男の子が生まれます。
血友病を決めるのは「X染色体」にある遺伝子の異常
血友病は、血を止める凝固因子を作る遺伝子の異常によって起こります。その遺伝子は「X染色体」にあります。そのため、親から異常のあるX染色体を受け継いだ子に、血友病が遺伝することになります。
遺伝しても発症しない「血友病保因者」
異常のあるX染色体と正常なX染色体を1本ずつ受け継いだ女の子は、血友病の遺伝子を持っており、このような人を「血友病保因者」といいます。多くは無症状ですが、中には⻘あざができやすい、過多月経など少し血が止まりにくい人もいます。また、保因者から生まれてくる子どもは血友病である可能性があるので、出産時には吸引分娩などを避ける必要があります。
突然変異によって発症することもある
家系内に血友病の患者さんがいなくても、遺伝子の突然変異によりX染色体に異常が起こり発症する場合があり、その割合は血友病患者さん全体の30〜50%1)と言われています。
- 1)白幡聡, 福武勝幸 編. みんなに役立つ血友病の基礎と臨床 改訂3版. 株式会社医薬ジャーナル社. 2016, p101-102.