生活費サポート

  • 監修: 産業医科大学 名誉教授 白幡 聡 先生
    産業医科大学病院 ソーシャルワーカー 野田 雅美 先生
    産業医科大学病院血友病センター ナースコーディネーター 柏原 やすみ 先生

障害基礎年金

障害基礎年金は病気やけがによる障害で日常生活や仕事をすることが困難になった場合の経済保障です。国の定めたいくつかの要件に該当しなければ受給できませんが、血友病および類縁疾患の患者さんのように先天性の病気の人は、「20歳前に障害の原因となった病気やけがの初診日があるケース」として障害基礎年金の申請ができます。ただし、この場合の申請には通常の支給要件に加えて所得制限があります。これは20歳前の傷病による障害基礎年金の対象者は国⺠基礎年金加入前(年金保険料未納)の傷病に対して年金の支給を受けるためです。
年金制度は複雑なのでここでは血友病および類縁疾患の患者さんが障害基礎年金を申請する場合に絞って解説いたします。①、②どちらの場合も所得制限に該当しないかを確認の上(表参照)、申請して下さい。確認の窓口は市区町村役場の税務課です。

表 20歳前障害の所得制限の金額(扶養家族無しの場合)

全額支給停止2分の1支給停止
前年の本人所得が4,721,000円を超える場合前年の本人所得が3,704,001円~4,721,000円の場合

・前年の本人所得が3,704,000円以下なら全額支給となります。扶養親族がある場合は上記の所得限度額に加算がつきます。

(金額は2022年4月現在)

  • 20歳で初めて障害基礎年金を申請する場合

〈申請書類〉

〈20歳の誕生日前後3ヵ月以内に〉

  • 20歳で初めて申請する場合は、20歳の誕生日前後3ヵ月以内に診断書を書いてもらいましょう。
  • 誕生日に必ず受診できるとは限らないので、誕生日前後3ヵ月以内に受診して診断書を書いてもらいましょう。この20歳の誕生日前後3ヵ月以内というのは20歳前に発症した傷病の障害基礎年金の申請に重要なポイントとなります。

・20歳の誕生日前に診断書を作成する場合は市区町村役場の国⺠年金の窓口でいつの日付で申請するのかを確認して下さい。

診断書用紙(血液・造血器その他の障害用)様式第120号の7

診断書用紙(血液・造血器その他の障害用)様式第120号の7
診断書用紙(血液・造血器その他の障害用)様式第120号の7

診断書用紙(肢体の障害用)様式第120号の3

関節の障害も申請する場合は診断書用紙(肢体の障害用)様式第 120号の3
関節の障害も申請する場合は診断書用紙(肢体の障害用)様式第 120号の3

病歴・就労状況等申立書

病歴・就労状況等申立書
病歴・就労状況等申立書

  • 障害認定日(20歳の誕生日)からかなりたって障害基礎年金を申請する場合

障害基礎年金の存在を知らなかったり、20歳の時には申請しなかった人が障害認定日から何年も後になって申請することもあります。この場合、手続きの流れは①と同じですが主治医の診断書用紙が2枚必要になります。障害認定日のものと、申請時の現在の症状を記入してもらったものがそれぞれ必要です。関節の障害も併せて申請するなら、こちらの診断書用紙も2枚必要です(この場合、合計4枚必要ということになります)。
障害年金には「遡及請求」といって、申請日から最大で5年分は、障害年金の支給を遡って受けることができる制度があります。つまり、障害認定日から10年たって申請した場合、10年分の受給はできませんが申請日から5年分は受給できるということです。5年分は遡れるといっても、できれば障害認定日からあまり経過しない期間内での申請をお勧めします。医療機関のカルテの保管義務期間は5年間と定められています。ずっと同じ病院にかかっていればまず問題はないと思いますが、「20歳の時と30歳の時の病院が違って、障害認定日の時のカルテがない」ということが起きないとも限りません。この場合、「事後重症」といって申請日以降の状態だけが障害年金の対象となります。
なお、2022年4月分からの障害基礎年金額は、1級972,250円/年、2 級777,800円/ 年です。

障害認定日(20歳の誕生日)からかなりたって障害基礎年金を申請する 場合

〈「遡及請求」と「事後重症」〉

  • 遡及請求 :障害認定日に障害年金に該当するケースは申請日から5年分の年金を遡って受給可能。
  • 事後重症 :障害認定日には障害年金に該当しなかった、もしくは障害認定日の診断書が作成できないケースは申請日(実際には申請の翌月)からの支給となる。