97号(2020年2月発行)

血友病のそこが知りたい
血友病患者と運動・スポーツ❷
10 代の患者さんのスポーツ参加のポイント

10代の患者さんのスポーツ参加のポイント

聖マリアンナ医科大学病院 リハビリテーションセンター 鈴木 智裕 先生

近年、血友病患者さんのスポーツ参加はより身近になり、「運動はしない方がいい」という時代から、十分な止血管理をした上で「運動を積極的に行っていくべき」という時代になってきています。


今回は、体育や部活動など、スポーツに触れる機会が多い10代の患者さんのスポーツ参加の2つのポイントについて解説していきます。

  • 1.

    スポーツ種目の選択

  •  スポーツは「走る」「跳ぶ」「接触の有無」といった種目特性を踏まえて、活動強度(出血リスク)別に1〜3のカテゴリーに分類されています(図1)。同じ種目であっても、参加のスタイル(体育の授業、部活動や地域のクラブ、不定期の参加等)によって、運動強度や頻度が異なり、出血リスクも変化します。
  • 図1活動強度(出血リスク)からみたスポーツ種目の推奨度
活動強度(出血リスク)からみたスポーツ種目の推奨度

本人の強い希望で推奨度の低い種目を選択する場合には、出血のリスクを認識した上で、出血時や関節症状増悪時にしっかり休息をとるなど、運動の頻度や負荷の調整について、本人と家族、指導者間で共通認識を持つことが大切です。

小学校(中高学年)

この時期に、いろいろな動作や技術にチャレンジする経験は、効率の良い動作の習得につながるだけでなく、運動に対する前向きな捉え方を形成する上でも大切です。興味を持った種目があれば、まずは体験会等に参加してみるのもよいと思います。

一方で、早い時期から特定の種目に特化して取り組むと、特定の運動方向や運動様式を繰り返すため、関節や筋に負担がかかりやすいというリスクが生じます。例えば、野球であれば、ときどき左右を替えて素振りをするなどの工夫をしたり、スポーツにこだわらずに、外遊びなどでいろいろな運動要素が経験できるとよいでしょう。

中学・高校

部活動では、1年生と3年生で体格的にも体力的にも大きな差があるため、特に体が慣れていない1年生の前期には、接触や運動量・強度の増加等で身体的負荷がかかりやすいため注意が必要です。

また成長期に入ると、骨の成長に筋の長さが追いつかず、筋の柔軟性が低下しやすくなります。柔軟性の低下はけがのリスクを高めるので、積極的にストレッチをしましょう。

大学

部活動やサークルに参加する、個人で体を動かすなど、スポーツへの関わり方も個人差が出てきます。受験勉強の間は運動の機会が減るため、大学進学後に運動を再開する際は特に運動負荷の調整が必要です。社会人になってからの運動習慣を形成する大切な時期ですので、自分にあった種目やペースを見つけましょう。

  • 2.

    現在の関節状態・運動能力の把握と関節ケア

  •  
    • 出血を繰り返している関節(ターゲットジョイント)や、可動域制限のある関節がある場合、事前にあるいはスポーツ参加と並行して、関節可動域と筋力の改善を図りましょう(図2、3)。
    • ウォーミングアップやクールダウンを習慣づけましょう。
    • 出血時は出血時補充療法と合わせて、RICE処置Rest:局所の安静、Ice:アイシング、Compression:バンテージ等での圧迫、Elevation:心臓より高く挙げる)を行いましょう。

図2

制限が生じやすい足関節背屈可動域のチェック方法(しゃがみこみ)

足をそろえて後ろに手を組んだまましゃがんでみよう。かかとを浮かさずにしゃがむことができればOK(写真左)。

制限が生じやすい足関節背屈可動域のチェック方法(しゃがみこみ)

図3

足関節まわりの筋力チェック方法(片足かかとあげ)

かかとがまっすぐ上がればOK(写真左)。
かかとが外側に流れて足の小指側で支えている場合は、足関節まわりの筋肉のアンバランスが考えられる(写真右)。

制限が生じやすい足関節背屈可動域のチェック方法(しゃがみこみ)