血友病患者さんとご家族のための情報誌「ECHO」

《close-up》

あこがれの大人になるために。夢はプロのダンサー!カッコいいダンスで自分を表現したい

イメージ

木村さん(仮名)は、高校を卒業したばかりの18歳。小さい頃から踊ることが大好きな木村さんは、プロのダンサーという夢に向かって、レッスンを受ける毎日を送っています。ダンスは激しい動きもありますが、「血友病だからできないとは考えない」と言います。アメリカに留学し、ダンスを極めることを目標とする木村さんに、ダンス漬けの日々について伺いました。

学校での大きな出血経験はゼロ、筋肉をつけて長距離も走り込む

1歳頃から家庭注射による予防投与を始めました。何度か関節内出血を経験しましたが、幸い学校ではそのような大きな出血をしたことがなく、体育も普通に参加していました。中学時代は、陸上部で長距離走に取り組みました。注射を欠かさなかったことと、体を動かして筋肉をつけていたことがよかったのではないかと思います。

踊ることが好きで、小さい頃からテレビに好きなダンスグループが出ると、まねをして踊っているような子どもでした。小学生のときに1年間ダンスを習い、とても楽しかったことを覚えています。中学で一度ダンスから離れましたが、やりたい気持ちはずっと持ち続けていて、高校入学後、再開しました。小学生のときのような地域のダンススクールではなく、本格的なレッスンが受けられるスタジオに通っています。膝を使う激しいダンスを含めいろいろなジャンルのダンスを踊りますが、特にヒップホップが好きですね。

受験生の夏に気づいたダンスへの思い

高校3年生の夏までは大学進学を考えていました。夏休み中はダンスのレッスンに行かず、塾の夏期講習に通って受験勉強に集中しました。でも、ダンスをしていないとストレスが溜まりすぎてしまって……。夏休み後にまたレッスンに戻ってみたら、やっぱり楽しいと思いました。それからは、大学で勉強する時間をダンスに使いたい、そしてプロのダンサーになりたいと考えるようになりました。

通っているスタジオは有名なプロダンサーを輩出しており、プロを目指している人も大勢います。大学に通いながらレッスンを受けている人、ダンス一筋の人などさまざまな人がいるので、話を聞き、よく考えた末に、大学進学をやめることにしました。将来の夢がほかになかったら大学で探していたのかもしれませんが、僕はダンサーという夢に向かって頑張ろうと決心したんです。

両親とはたくさん話をしました。「大学でダンスを学んだら」と提案してくれましたが、僕がやりたいダンスは大学では学べません。何度も話し合った末、理解してもらえました。進学校に通っていたのでクラスメイトはみんな進学します。担任の先生に反対されるかと思ったのですが、三者面談で切り出したら、意外なことに「いいんじゃない?」という反応で驚きました。「ダンスを頑張っているんだから、ダンスで生きていきなよ」という感じです。友達も、夢に向かって進もうとする僕に「すげえな!」と言ってくれます。小さい頃からの主治医の先生も「いいんじゃない」「やりなよ」と賛成してくれました。

まずはヒップホップの本場アメリカに留学!

高校を卒業してからは、昼間はアルバイトをして、夜はダンスのレッスンという日々です。1日の半分はレッスンを受けていますが、とにかく踊るのが楽しくて、何時間踊っていても全然苦になりません。

ダンスはレッスンにお金がかかるだけでなく、プロではないので、イベント時にステージに立つには、こちらがお金を払う必要があります。好きなことをやるのだから、自分でお金を稼いでその費用に充てるよう両親に言われています。だから、高校生のときからアルバイトをしているんです。

短期的な目標は、近い将来アメリカへのダンス留学を実現させて、ヒップホップの本場でレッスンを受けることです。費用もかかるので、ダンサー志望の仲間とシェアハウスに住みながらレッスンに通うことを考えています。日本とアメリカは文化や国民性など何もかもが違うし、ヒップホップのテクニックではアメリカが段違いに高度です。僕も周りを気にすることなく、自分らしいダンスを踊りたいと思い、アメリカへの憧れがますます強くなりました。留学先のレッスンでスキルアップしたいですね。

ステージで活躍したい!

留学でダンスを上達させたら、アーティストのバックダンサーを務めてみたいし、ソロでもステージに立ちたいですね。レッスンのインストラクターとして、自分のダンスを教えることもしたいです。最近のダンス人気でプロを目指す人が増えていることから、簡単に叶うことではないと思っていますが、最終的な目標はプロダンサーとして活躍することですね。

ダンスが何よりも好きですし、周囲のみんなが応援してくれていることもあって、プロになると一度覚悟が決まったら、気持ちが揺らぐことはありませんでした。

「病気だから無理」と決めつけないでチャレンジしよう!

日頃、血友病を意識することはないですが、スノーボードをするときはジャンプを避けたり、膝を床に強く打つようなダンスを踊るときはサポーターをつけたりして、けがの予防策はいつも考えています。でも、血友病だから何かができないと考えたことはありません。僕と同じように血友病で、まだ夢中になれるものが見つかっていない人がいるかもしれませんが、病気だから無理と決めつけないで、何でも挑戦してみたらいいのではないでしょうか。僕もずっとやってみたかったダンスを思いきって始めたら、職業にしたいほど夢中になってしまったのですから、病気を理由に何かをしないのはもったいないと思います。

自分の体を守るため、そして夢を叶えるために

中高生くらいの時期は親に注射するように言われると、煩わしく思うこともありますよね。自分の体のことは自分が一番わかっているのだから、と僕も両親と衝突したことがあります。親が心配して言ってくれていることは、わかっているんですけどね。たぶん、誰もが「自分はどうして血友病なんだろう」と思っているんです。でも、注射をしないことでけがをしたり、関節症が進行したりすることを考えたら、面倒でもストレスに感じても、我慢して注射を続けてほしいです。治療を続けて、自分の体を大切にしてほしいですね。

以前、腕がないアメリカ人ダンサーのダンスを見たことがあって、とても感動しました。血友病に限らず、ヒトはそれぞれいろいろなことを抱えながら、それを自分の個性としてうまくつきあって、世界中で活躍しています。僕も絶対に夢を叶えたい。そしてプロダンサーとして、自分を表現していきたいです。

お母様から

道を踊りながら歩いていたよ、とご近所の人に言われるほど、踊っているのが楽しいようです。夫婦とも演劇に携わっていて舞台は身近なものだったので、ダンスを始めたときは驚きませんでした。

でも、「ダンスで生きていきたい」と言い出したときは、やはり血友病のことが一番に頭に浮かび、とても心配しました。病気を持ちながらダンサーとして活躍するのは困難なことがあると思いますし、海外留学にも不安がないわけではありません。大学に通いながらダンスを続けたらと提案しましたし、ダンスが学べる大学も探しましたが、本人が望むダンスは大学では教えておらず、何より本人の意志が固かったですね。

主治医の先生方も賛成してくれましたし、本人もやれるところまでやらないと納得できないでしょう。本人が決意したことですから、応援していきたいと思います。

PP-JIV-JP-0264-20-06

お役立ち情報

  • 血友病輸注記録アプリFactorTrack
  • 血友病関節ビジュアライザー
  • 血友病患者さんのための情報誌「エコー」
  • かた丸くん忍法ナビ
  • ECHOミュージアム