血友病患者さんとご家族のための情報誌「ECHO」

血友病のそこが知りたい
血友病患者と小児歯科

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静岡県立こども病院 歯科 科長 加藤 光剛


1. 血友病患者さんにおける口の中の出血

口の中の出血の特徴

口の粘膜は毛細血管が豊富なため出血しやすく、小さな傷でも止血しにくく、じわじわと出血が持続することがあります。口の中は唾液で濡れていて、かさぶたが溶けるので、乾燥したかさぶたができにくく、血腫(血豆)ができることがあります。血腫は中の血が十分に固まらず、表面がゼラチンの様な状態で固まった、柔らかくブヨブヨした風船状の血の塊です。

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血が止まっていても、血腫の根元の傷口は血が止まっていないため、血腫を繰り返すとより大きくなり、傷口も拡大して止血しにくくなります。血腫が大きくなったら拭い取って、再度止血させることが必要です。

また、少量の出血が持続していても、唾液に溶けて飲みこんでしまうため、出血の持続に気がつかず貧血になる場合もあります。


口は安静にできない

食べない、飲まない、喋らないことはできませんので、口を使わずに安静に保つことは容易ではありません。傷口が気になり、より口を動かし、無意識に舌で触り再出血しやすいのも特徴です。そこで、出血時の食べ物に注意が必要です。口の中をサッパリさせたくても、飴やグミを食べたり、ガムを噛むのは避け、血が止まっても2~3日は柔らかい食事にしましょう。

赤ちゃんの出血

赤ちゃんが口に物を入れて遊ぶ時期と、前歯が生えてくる時期は重なります。歯が生えてくる途中の歯肉は出血しやすいため、物をしゃぶったり、噛んだりして、歯茎から出血することがあります。また、ヨチヨチ歩きができるようになると、転んだり、ぶつけたりして、口の出血をすることがあります。初めての出血経験で焦ってしまわないようにしましょう。口の中の出血は唾液と混ざるため、実際の出血量より多く見えます。寝ている時に出血すると、よだれと混ざった血がシーツに大きなシミを作り、びっくりするかもしれませんが、出血量はシミよりずっと少ないので焦らないようにしましょう。

血友病児の最初の出血が口の中の出血ということも多く、血が止まらないことから血友病と診断されたり、初めて凝固因子製剤を使用したりすることもありますが、冷静に対応しましょう。

幼児期になると

さらに活発に体を動かして外遊びをするようになり、幼児スポーツ教室に行き始めて、事故により口の出血をすることがあります。また、食事中に誤って舌や頬を噛んでしまったり、魚の骨が刺さったり、フォークやお箸で口の中を刺したりするなど、食事による出血が増えます。口は体の中でも小さな頃に思わぬ出血が多い部位です。

口の中の出血は出血場所を確認することが大切です。しかし口の中は見にくい上に、子どもさんは見られることを嫌がり、口を開けなかったり、暴れたりして、出血場所をなかなか確認できないことがあります。血が止まらず、出血場所を確認できない場合は、歯科を受診しましょう。

2. 歯科疾患の治療と予防

歯科を受診する時は

血友病の患者さんを診たことのある歯科医は少なく、血友病に詳しい歯科医は極めて少ないのが現状です。そこで、血友病の主治医の先生に歯科医師との連携をお願いして、紹介状を書いてもらいましょう。

歯科治療と出血

噛み合わせの面だけの小さな虫歯の治療や、歯科治療で使用する局所麻酔は出血が少なく、自然に止血するので問題ありません。しかし歯科治療器具は尖っている物が多く、硬い歯を削る機械は高速で回転しているため、ちょっとしたことで歯茎が傷つき出血する場合があります。歯と歯の間、歯茎の近くの虫歯治療や、歯石の除去は傷つきやすいので要注意です。

小さな子どもさんの歯科治療は、じっとして口を開け続けることができなかったり、暴れて危険なため治療ができなかったり、傷ができて出血し、トラブルとなる場合があります。

また、虫歯や歯並び、歯の生え変わりのために、歯を抜かなければならない場合があります。歯は骨に埋まっているため、歯を抜くと直接骨が露出した穴ができます。できた穴は縫い合わせることができないので、骨から出血し大変止血しにくい状態となります。歯を抜く場合は、主治医に相談して、適切な凝固因子製剤の注射を行う必要があります。

歯磨きと出血

血友病患者さんでも歯磨きによる歯茎からの出血は自然に止まります。歯茎の細い毛細血管は切れても、血管の切り口が引き締まって閉じるからです。怖がって歯ブラシが歯茎に触れないような磨き方で、歯肉炎が進行し、歯茎の腫れが大きくなると血管が太くなり、歯磨きによる傷でも血が止まりにくくなりますので、歯科医や歯科衛生士の指導に従ってきちんと磨きましょう。

歯の生え変わりと出血

乳歯がグラグラしてきたら、積極的にグラグラさせて生え変わりを促します。歯の根っこの付着している部分をだんだん少なくして、歯茎に少し付着しただけのブラブラの状態になってから抜けば止血しやすくなります。歯科でいきなり抜くと、止血しにくいので、怖がらずにグラグラさせるのがコツです。

歯科疾患を予防しよう

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身近な歯科疾患である虫歯や歯肉炎は生活習慣病の一つと言われており、正しい食生活と正しい歯磨きで予防できます。歯が生えてきたらまず歯科を受診し、その後も定期健診を行うことが重要です。

L.JP.MKT.OH.03.2018.2909

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