血友病患者さんとご家族のための情報誌「ECHO」

血友病のそこが知りたい 忍び寄る生活習慣病:高血圧について知る

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聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科 教授 柴垣 有吾

1. 高血圧とは

高血圧は医療機関で測定した血圧(最高血圧/最低血圧)が140/90mmHg以上で定義されています。日本人では高血圧の潜在的患者数(診断されていない人も含めると)は約4,300万人と、国民の3人に1人が罹患する国民病であり、食生活(特に塩分摂取)・身体活動・飲酒などの環境要因が遺伝的な素質や年齢(高齢化)とともに病態に関与している代表的な生活習慣病です。

高血圧は健康に良くないものであるということは、現在では多くの方がご存知だと思います。しかし、たった50年程前までは、この常識は常識ではありませんでした。第二次世界大戦時の米国の大統領であったフランクリン・ルーズベルトは高度の高血圧に伴う脳血管障害によって亡くなりましたが、彼の高血圧は治療されることがなかったのです。

これは当時は高血圧は正常な代償反応であって、治療対象ではないという考え方があったからです(もっとも、当時は有効な治療薬はほとんどありませんでしたが)。ですが、1960年代以降の降圧利尿薬の開発や降圧薬の臨床試験により、高血圧の是正が脳や心臓の血管障害を抑制することが証明されるようになって、初めて治療が必要であることが認識された"新しい"病気なのです。

2. 高血圧は何が問題なのか?

上述のように高血圧はそれ自体が問題というよりも、高血圧が続いた結果、血管に異常が起き(特に動脈硬化とそれに起因する血管の閉塞・破綻)、脳や心臓の血管障害や慢性腎臓病など重要な臓器に合併症を引き起こすことが問題となります(図)

高血圧によって生じる重要臓器の主な合併症

図 高血圧によって生じる重要臓器の主な合併症

逆に、これらの臓器障害を生じる原因の半数が高血圧に起因すると推定され、日本人においては高血圧に起因する死亡者数は年間約10万人もいるとされています。国が健康政策として推進している「健康日本21」では、食生活・身体活動・禁煙などの対策推進により国民の血圧を10年間で4mmHg低下させることを目標としています。たった4mmHgではありますが、国民全体で考えると脳卒中が年間約1万人、心筋梗塞が年間約5千人も減ることが期待されるのです。

高血圧自体が問題というより、その結果が問題という意味合いは、一時的な血圧上昇では大きな問題は起こさないが、高血圧が月・年の単位で持続すると血管障害が生じて、問題となるということです。例えば、重量挙げの選手はバーベルを上げている時には、最高血圧が200-300mmHg前後にもなるとされていますが、それで脳卒中になる訳ではありません。これは健康な選手の普段の血圧は正常であるからで、このような高い血圧でも持続時間が短い一時的なものでは問題はないということを示しています。

3. 血友病患者でも高血圧は多いの?

血友病患者さんは、一般男性より中高年層の割合が低いと言われており、高血圧の人の割合(罹患率)も低いのではと思っている方も多いかもしれません。しかし、最近の米国からの報告では一般男性での高血圧の罹患率が31.7%であるのに対し、血友病患者さんでは49.1%と高いことが示されています1)。この罹患率は年齢とともに上昇すること、血友病の重症度が高いほど高い(重症型は軽症型に比べ50%上昇)ことも示されています。さらに、同じく米国の報告では、脳卒中や心臓病の罹患率が高いことも示されています2)

血友病患者さんに高血圧や脳卒中、心臓病の罹患率が高い理由は明確ではありませんし、米国人での結果が日本人にも当てはまるかも分かりませんが、止血が困難な血友病患者さんの場合、脳卒中を起こすと脳出血の程度を悪化させる可能性があり、より注意が必要と言えます。

4. 高血圧の治療はどうするの?

高血圧の治療は高血圧の程度と動脈硬化のリスクの有無によって方針が決まります。高血圧の程度が非常に高度(Ⅲ度高血圧:180/110mmHg以上)ではすぐに薬物治療の適応ですが、軽度から中等度ではリスク因子(糖尿病や腎臓病、過去の心疾患)がなければ、まずは生活習慣の改善から始めます3)

生活習慣は(1)食生活、(2)身体活動、(3)嗜好品からなります。改善のためのポイントをに示します。

高血圧予防のための生活習慣改善のポイント3)

表 高血圧予防のための生活習慣改善のポイント

食生活における塩分制限は特に重要です。軽い運動は血圧を下げることがあり、カロリー制限とともに行うことで、高血圧の要因となる肥満予防にも繋がりますが、激しい運動は血圧を上昇させることがあります。また、多量のお酒は血圧を上昇させますし、喫煙は確実に高血圧を悪化させます。

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生活習慣を改善しても血圧が低下しない人、あるいは高血圧の程度が高く動脈硬化のリスク因子を持っている人では薬物療法が必要となります。

以上、高血圧についてお話ししましたが、このような高血圧にならないためには、予防が大切です。生活習慣改善のポイント(表)を参考に、まずは予防を心がけましょう!

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