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血友病患者さんとご家族のための情報誌「ECHO」

血友病のそこが知りたい 忍び寄る生活習慣病:動脈硬化と心筋梗塞について知る

東京医科大学病院 循環器内科 主任教授 山科 章


イラスト

治療薬(血液凝固因子製剤)や定期補充療法など治療法の進歩とともに、最近では血友病患者さんにも高齢の方が増えており、生活習慣病合併の懸念が生じています。これまでにも本誌では、生活習慣病に関連した検査値の見方やCKD(慢性腎臓病)について紹介してきましたが、今回は心筋梗塞とその発症要因となる動脈硬化について解説するとともに、血友病患者さんにおける注意点を紹介します。

バックナンバーをご覧になりたい方は、こちらから(http://www.hemophilia.jp/ja/home/tools/echo/)

1. 動脈硬化と心筋梗塞について

動脈硬化とは

動脈硬化とは動脈(血管)が硬くなることと書きますが、実は動脈硬化には二つの側面があります。一つは、文字通り血管自体が硬くなることですが、もう一つは血管の内側の壁にコレステロールなどが沈着して内腔を狭くする粥腫ができることです。

英語では動脈硬化のことをアテロスクレロ―シス(Atherosclerosis)と呼びますが、この日本語訳は粥状動脈硬化です。この言葉の方が病態をより正確に表していますが、ここでは動脈硬化として説明します。動脈硬化は加齢に伴って、誰にでも必ず起こります。そして加齢にさまざまな危険因子が加わると、動脈硬化は進行し、病気を起こします。たとえば、心臓に栄養を送る冠動脈の動脈硬化が進んで、内腔が狭くなり血流が悪くなると狭心症、さらに冠動脈の内腔の粥腫が崩れてそこに血栓が付着し内腔を閉塞すると急性心筋梗塞になります。こういった動脈硬化は症状がでるまで、少しずつ進行し長く症状を伴わないので、「沈黙の殺人者(サイレント・キラー)」とも呼ばれています。

心筋梗塞とは

冠動脈の粥腫が崩れると血管に傷がついたことと同じ状態になるため、傷を塞ぐのと同じように局所で血液が固まります。この固まった血液を血栓と呼びますが、血栓により血管が塞がると、心臓に栄養を送る動脈が詰まり、心筋が壊死して心筋梗塞を起こします。

心筋が壊死すると、胸の痛み、呼吸が苦しい、吐き気などの症状を伴います。ときに、心室細動という怖い不整脈が起こることがあり、突然死につながりますので、急性心筋梗塞と思われる症状が起きたら、すぐに医療機関を受診するか、救急車を呼びましょう。

2. 血友病患者さんでも動脈硬化や心筋梗塞に要注意

血友病患者さんにおける動脈硬化、心筋梗塞のリスク

血友病患者さんは血が止まりにくいので、血液はサラサラで血栓の病気は関係ないように思われますが、動脈硬化の原因となる運動不足、高コレステロール血症(脂質異常症)や糖尿病、高血圧あるいは喫煙などによるリスクは、非血友病者さんと同じです。これまでのいくつかの疫学的調査において、動脈硬化による病気や心筋梗塞を合併した血友病患者さんが報告されています1,2)。それどころか、血友病患者さんは、動脈硬化のリスク因子である「高血圧」や「脂質異常症」などの有病率が一般男性よりも高いという報告2,3)もあります。

確かに血栓はできにくいかもしれませんが、血友病であるがゆえの日常生活におけるストレス、出血の懸念や関節障害により運動不足になりがちであることなども、要因として考えられます。また、定期補充療法や製剤の大量投与により、凝固因子レベルが一時的に非血友病者さんに近い状態になっていることがありますので、注意が必要です。

血友病患者さんにおける動脈硬化・心筋梗塞の治療

血友病という基礎疾患があると、動脈硬化や心筋梗塞の治療がより困難になることがあります。

動脈硬化の主な治療薬をに示します。コレステロール値の異常を改善するお薬は、特に出血リスクに影響を及ぼさないと考えられますが、一方、血栓を予防するための抗血小板薬、抗凝固薬は出血を助長する可能性があり、慎重に投与する必要があります。また末梢血管拡張薬も作用メカニズムからみて、注意が必要です。

心筋梗塞の治療は、急性期と慢性期で異なります。急性心筋梗塞(いわゆる発作)の場合は、入院してできるだけ早期に、詰まった血管をカテーテルにより拡げます(再灌流療法)。また、その部分に血栓が付いて閉塞しないように抗血栓療法を行います。血友病患者さんの場合には、その治療において、血栓を予防する治療と止血療法(補充療法)のバランスを考えて非常に慎重に選択する必要があります。

慢性期の心筋梗塞の場合は、再発予防のために動脈硬化と同じような治療法(表)を行いますが、抗血栓治療は血友病による出血傾向とのバランスを考えながら行います。

動脈硬化の主な治療薬と血友病患者さんの出血への影響

表 動脈硬化の主な治療薬と血友病患者さんの出血への影響

まずは予防が重要!

一般的にも言われているように、生活習慣病を予防するためには、日頃の生活習慣を見直し、適度な運動を行い、食事にも気を配り、定期的に健診を受けることを心掛けましょう。予防におけるポイントをご紹介します。

定期健診:
血友病の患者さんは、血友病の治療で定期的に医療機関を受診されていると思いますので、その際に、血圧測定のほか、コレステロールや血糖値など生活習慣病の検査などを一緒に受けて、異常がないかチェックしてください。

運動療法:
出血リスクのないレベルの運動療法について、主治医に相談してみましょう。また、運動療法がどうしても必要な場合は、予備的補充療法や定期補充療法の導入によって運動ができることがありますので、主治医にご相談ください。


1)
瀧正志ほか: 血液凝固異常症全国調査 平成27年度報告書
(http://api-net.jfap.or.jp/library/alliedEnt/02/index.html)
2)
Pocoski J. ほか: Haemophilia 20: 472-478, 2014
3)
Drygalski A. ほか: Hypertension 62: 209-215, 2013

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