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節目のケアシリーズ

《こんな時、どうしたらいい?》思春期編

不安定な思春期の子どもへの対応

小学生の頃は出血が多く、ほかの児童に比べてかなりハンディがあったので、クラスの友達にも病気のことを話してきました。これまでそのことで困ったことはなかったのですが、中学生になる頃から本人がクラスメイトに病気のことを話すのを嫌がったり、体育の授業でも親に隠れて無理なことをしようとしたりしています。私の子どもは思春期の入り口にいるわけですが、これから先、病気とうまくつきあっていけるのか心配です。

一般的に小児から成人への過渡期を思春期といいますが、その始まりは第二次性徴期の初めとされています。しかし、実際には、内的な変化は身体の変化が現れる前から始まっているといわれます。思春期の初めには急速に身体の変化や心の衝動が現れます。また、思春期は成人になるための準備の時期でもあり、独立を果たす過程であり、それは社会の中で自分のアイデンティティを確立する過程でもあるわけです。身体と心、社会の中での自分の価値体系の確立という激動の時期を迎えるのですから、不安や混乱、苛立ちや反抗が伴います。一方では同世代の仲間は大切な存在になり、また自分に対する関心も高まります。血友病という慢性疾患を抱えるお子さんが子どもから大人になってゆく時期に出会う問題について一緒に考えてみましょう。

血友病の子どもの思春期の課題と対応

1) 独立に伴う問題

それまで親や医療関係者のいうことを素直に聞いて治療にも協力的であったお子さんが思春期に入って反抗的になり、治療がうまくいかなくなるというケースはそう多くはないのですが、珍しいことではありません。独立の時期である思春期になると、他人から支配されていることに苛立ちを感じることがあります。病気ゆえに親や医師の指示に従わなくてはならないということは独立への指向性と相反してしまうことにもなります。思春期は自分でコントロールできるかどうか不安な時期であり、治療に関しても本人に十分な説明をするとともにできるだけ本人の意思を尊重するべきでしょう。お子さんの言葉や訴えを十分に聞き、一緒により良い治療を考えるようしてゆく姿勢が大切です。

2)仲間意識の問題

思春期に入ると、親から独立をはたすため、仲間との一体感を大切にするようになりますので、血友病であることで仲間に入れないのではないかという不安を持つお子さんもいると思います。そこで、病気のことは小学生の時のようにみんなに話して欲しくないと思うようになるのでしょう。もっとも病気でなくても自分の弱点は容易く他人に知られたくないのはごく自然な感情であると思います。病気を恥ずかしいと考えるのでなく、病気があってもがんばっている自分に誇りが持てるような対策を考えて実行できるようになってゆくことが重要ではないでしょうか。対策としては、自己注射ができるようになるとか、血友病の知識を身につけることはとても効果的であると思います。自分の病気を自分でコントロールできることにより、仲間と行動をともにすることができ、大きな達成感を得ることができます。そのことは次の悩みや困難を解決する自信につながると思います。病気でありながらそれに立ち向かっている自分に誇りが持てることが仲間とのかかわりをよくすることにもつながります。中学生くらいになると血友病のこともかなり理解でき、自分のこととして対処できるようになることを考えると、病気のことを友達に話すかどうかは本人の意思に委ねてよいことではないかと思います。友達との付き合いの中で自分の大切なことを話してよい相手なのかどうかを吟味して本人が判断することになるのではないでしょうか。

3)アイデンティティの問題

血友病の子どもさんが社会の中で自分のアイデンティティを確立してゆくためには、まず血友病であることを受け入れ、血友病がもたらす限界という現実も受け入れる作業が必要となるでしょう。例えば、体育やクラブ活動の中には自分にとっては無理なこともあるということを受け入れること、病気であるがゆえにできること、体験できたことの大切さにも気づくことなどですが、これらのことも受動的な生活の中からは見つけにくく、多様な経験を積み重ねる中で、つまり、能動的な行動がもたらしてくれることですから、お子さんが希望することを周囲の大人に相談できる環境を整えておくことも必要です。

その場合、血友病を診てもらっている医師やナース、カウンセラーなどにも相談し、対策や方法のアドバイスをもらうととても参考になるでしょう。

4)気長な支援

思春期に学校や治療面で悩みを持つお子さんを診療している当センターの小児科医師は本当に気長にその子の成長を見守りながらサポートされています。学校関係者や親御さんが動揺しそうになる時もこの小児科医師が支えています。中学生の時には外来に来ても言葉を交わそうとしない時期がありましたが、高校生になると、可能な限り受診し、自分から近況を医師に話すようになっています。このケースを見ていると、大切なことは周囲の大人が動揺せずにその子の成長や変化を気長に見守ってゆくことなのではないかと思います。また、思春期になったから急にその対応というようにケアするのでなく、お子さんの成長の延長線を予測しながら準備をしてかかわることが、ご家族にとっても我々医療者にとっても大切なケアの一環であると考えます。


[引用・参考文献]

奥山眞紀子・庄司順一・帆足英一編,小児科の相談と面接―心理的理解と支援のために,p.160-166,医歯薬出版株式会社,2002年(第2刷)

[引用・参考文献]

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